多様な表現に挑戦する機会がもたらした「いろんな絵を描きたい」というマインド/イラストレーター?卒業生 栗田有佳

インタビュー

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自分の描いた絵が社会性を帯び始める瞬間

――はじめに栗田さんのお仕事内容について教えてください

UNIZON イラストレーター 栗田有佳
お話を聞いた栗田有佳さん

その後、「こういうビジュアルで行きたい」というのをアートディレクターから聞いて、それを受けて私の方でざっくりラフのような形で描いて。で、もしテイストが合わなければまた別のタッチで描いてみたり、という感じですね。

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――学生の頃から“イラストレーターになりたい”という気持ちがあったのでしょうか?

栗田:それが高校生の時は“絵で生きていける”イメージが全然なくて、その方法も分からなくて。でも「芸工大に行きたい」っていうのはずっと前から考えてました。大学卒業後はIT関係の会社に入社して、その後、大学から始めたストリートダンスの経験を活かしてダンス講師になったんですけど、そんな時、グラフィックデザイン学科の澤口俊輔先生からこの会社を紹介していただき現在に至ります。

デザイン自体はもともとすごく苦手でしたが、いろんな可能性に出会わせてもらい、私が出来る仕事を見出していただいたことで、今ではいろんな仕事をさせていただけるようになりました。

※本学 グラフィックデザイン学科教授。詳しいプロフィールはこちら

UNIZON イラストレーター 栗田有佳
栗田さんがイラストを担当した商品パッケージ
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また、弊社は映像制作の仕事も行っていて、私も撮影の現場に立ち会わせていただきながらいろいろ経験を積んでいるところです。先日も、広告のお仕事で撮影に立ち会ってきました。どのような方向性で行くかというところから携わっていて、今ちょうどラフを起こしているところです。

――これまで手掛けてきたお仕事で、特に印象に残っているものは?

打ち合わせに行って制作して、そしてフルマラソンにも参加してみたんです。最後にはもう体中が超痛くて(笑)。でもそこで改めて気付いたのが、とても多くの方々がこのイベントに携わり参加されているということ。走っている間も、ずっと前に弊社のデザイナーがデザインしたマラソンTシャツを着ながら走っているランナーの方が目に入ったりして、その歴史の長さと、「この催しの絵を描いているんだな」ということを実感できるとても良い機会になりました。

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――このお仕事の魅力とやりがいを教えてください

栗田:いろんな人と関われること、そしてあらゆる視点から意見をいただく中で試行錯誤しながら考えを組み合わせていけることが大きな魅力だと思っています。個人では出来ないような大きい仕事にも取り組めますし、クライアントさんの業種も建築だったり飲食店だったり研究職だったりとさまざまで、いろんな世界が見られるのがすごく楽しいです。

それから、自分が描いた絵に文字が組み合わさったりデザインが組み合わさったりすることで何か社会性を帯びてくるというか、手元の絵がそうやって別の表情を見せることに自分でもハッとして、そんなふうに社会とつながる瞬間が好きですし、やりがいになってますね。

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――一方で個人の作品制作も続けているそうですが、UNIZONさんでのお仕事に影響を受けた部分などありますか?

栗田:それまでは作品の幅がすごく狭かったんですけど、幅広く仕事に挑戦させてもらう中で「いろんな絵を描きたい」というマインドを得られたことがとても大きいと思っています。また何年か振りに個展を開いたことでいろんな方に見ていただけて、グループ展にお声掛けいただいたりもしました。今では絵を描かない日というのはないかもしれないです。

――文芸雑誌『群像』の表紙やNHKラジオテキスト『エンジョイ?シンプル?イングリッシュ』の表紙など、書籍の装画を手掛ける機会も多いようですね

今はほぼデジタルで作品を描いていて、水彩や絵の具、ざらっとした紙などのテクスチャーをスキャンして、それをデジタルの絵と組み合わせる形で制作しています。そんなふうにソフトを手軽に使えたり、今日のAIが3日前のAIと比べて凄まじく進化しているような時代だからこそ、改めて“手作業”というものを大事にしていきたいなと思っているところです。

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TISで銀賞を受賞した作品「帰宅」

五感で学んだ経験が広げてくれた表現の幅

――栗田さんが卒業制作で描かれたシャケの切り身の絵がとても印象的だったのを覚えています

栗田:シャケは卒業してからも個人の作品としてずっと描き続けていました。大学2年の終わりか3年の頭頃に、友人と学内で展示をした際にシャケを描き始めて。シャケに行き着いたのは、スーパーでパック詰めされて並んでいるあの感じがすごく好きだったから。ちょっとずつ形が違うところにかわいらしさを感じたんですよね。

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栗田さんの作品「シャケの切り身」

――ちなみに栗田さんはファインアート(美術科)ではなくグラフィックデザイン学科を選んでいますが、その理由は?

栗田:絵を描くのは小さい頃から好きだったんですけど、実は予備校に入るまでアートとデザインの違いがよく分からなくて。でもそんな漠然としたなかでも、さっきお話ししたように自分の絵と他のものが組み合わさったり、いろんな方と関わったりっていう、そんな自分だけの表現にとどまらないところに面白さを感じていたのと、もともと文字やデザインが好きだったことからグラフィックデザインの学びを選びました。

芸工大のグラフィックデザイン学科には、走って絵を描いたり、木を削ったり、目隠しをして触れたり、そんな五感をとても大事にする授業が多くありました。デジタルで描くことが多い中、手作業とかイラストを描く上で1本の線を意識するような感覚ってすごく大事だなと思いましたし、今も仕事する上でずっと活き続けています。

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現在のグラフィックデザイン学科でも、五感を養うための授業が多く実施されている

――任你博の中で印象に残っていることがあれば教えてください

栗田:結構いろんなことに興味があったので、例えば“漆塗りをしよう”みたいな貼り紙を見て早朝に工芸の方と漆を採りに行ったり、版画の先生にワークショップをしていただいたり。プレス機を使ったらフェルトに穴を開けちゃってボロ泣きしたっけなー、とか(笑)。そんな貴重な経験をたくさんさせていただいて、先生方も皆さんとても優しくて、素敵な環境だったなと思います。

あとはダンスサークルに入っていたので、他県までみんなで挑戦しに行ったり、いろんな学科の子たちとその日の授業のことや課題の大変さとか、そういう話が出来たこともすごく大きかったです。今もいろんなところで活躍している友人たちから刺激を受けています。

――これから挑戦してみたいことはありますか?

栗田:映像の仕事に関わるようになったことで、“動き”の部分がイラストに活きてきたというか、静止画なんだけどちょっとストーリーが匂うようなものを一枚の絵づくりのところで考えるようになったんですね。それはこの会社に入ったからこそ得られた新鮮な感覚だと思っています。そういう平面だけじゃない新しい表現に挑戦していきたいですし、あとはアートディレクションのような目線で企画や絵づくりを考えていけるよう学んでいきたいと考えています。

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――それでは最後に受験生へメッセージをお願いします

栗田:きっと将来のこととかすごく不安だと思うんですけど、やっぱり一番は好きなものを大事にすることかな、と。あとはいろんなことに挑戦してみてほしいですね。私が高校生の頃は興味を持ったことに後先考えず参加していて(笑)、当時から日本文化が好きだったので能とか狂言の教室に参加して能舞台を歩かせてもらったり、着物を着て謡とか一連の流れをやらせていただいたり。

あとは部活で3年間バスケを続けた経験も大きいですね。毎日走るのがつらくて休みもほとんどなくて、しかも絵も描きたくて、というところで一度「辞めたいです」って伝えたことがあったんですけど、辞めないという選択の方向に持って行ってくれた先生や仲間がいたから最後まで走り切ることが出来たと思っています。今でも「頑張ろう!」って思えるのはそういう粘り強さみたいなものが今に活きているからでしょうし、そう考えると経験に無駄なことなんて一個もないなと感じます。

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今回の取材を通して、チームで働くことの喜び、さまざまな人と関わることの楽しさ、自分一人では出来ないであろう大きなことを成し遂げる達成感が、栗田さんの日々の仕事の原動力になっていることを感じました。そしてイラストレーションの枠を超え、映像やディレクション業務にも関わることで進化していく作家としての表現の形。常に新しい可能性に目を向けながら手を動かし続ける栗田さんの生き方は、これからクリエイティブな道を志す人たちにとって大きな希望となるでしょう。

(撮影:布施果歩、取材:渡辺志織、入試課?加藤)

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任你博 広報担当
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